AirTagに関する疑問に回答
Apple社が2021年に紛失防止タグ「AirTag」をリリースして以降、AirTagをロードバイクの盗難対策として利用するためのアダプターが各社から販売されています。
また、AirTag機能を内蔵したデバイスなども販売され始めました。
そこで、最近、よく目にする
「ロードバイクの盗難防止にAirTagは使えるのか?」
「AlterLockとの違いは?」
という話題に対して、まとめてお答えしたいと思います。


1. AirTagとは?
Apple社が「紛失防止」を目的として開発したコイン型の製品で、iPhoneの「探す」機能から利用することができます。
バッグや財布、自宅の鍵などに取り付けることで、紛失した際に見つけ出すことをサポートします。
iPhone専用のため、Androidからは利用できません。
2. AirTagの仕組み
AirTagはBluetoothの電波を定期的に発信し、それを受信した付近にあるiPhoneの位置情報を利用して、自らの位置をクラウドに送信します。
位置情報や追跡というとGPSを想像しますが、AirTagはGPSモジュールを搭載していないため、単独では位置情報を特定したり、遠距離の通信ができません。
AirTagの電波が届く範囲は10m程度と言われているため、付近にiPhoneがあるときだけ位置情報を送信することができます。
3. AirTagはこんなときに役に立つ
やはり、AirTagが本領を発揮するのは、紛失防止です。
バッグや財布などであれば、紛失するのは店舗の中や人通りのある街中などで、警察署や遺失物センターに届くこともあるでしょう。
必ずと言っていいほど近くにはiPhoneを持った人がいるため、高い精度で発見することができると思います。
4. ロードバイクの盗難防止にAirTagは使える?
どんな製品にも100%はありません。
「使える」「使えない」のゼロイチで考えるのではなく、自身の利用シーンに合わせて対策を組み合わせ、リスクを減らす、という考え方が大切です。
ロードバイクの盗難リスクを減らす要素はいくつかあります。
- 自宅では室内保管
- 短時間でも鍵を掛ける
- ホイールとフレームを含めて地球ロックする
- すぐに駆け付けらえない場所に停めない
- 毎回同じ場所に停めない
- 取り外されやすいパーツは持ち歩く
- 防犯登録をする
これらに加えて、犯人をひるませるアラーム装置、盗難されてしまった場合に備えた追跡装置が有効です。
上記に挙げた盗難リスクを減らすための要素は、追跡装置以外は全て盗難を未然に防ぐための「盗難防止」に繋がります。
追跡装置は、あくまで盗難されてしまった後に発見できる可能性を高めるための「安心材料」です。
AirTagにはアラーム機能は無いため、盗難防止の効果は期待できないでしょう。
追跡については、人通りの多い街中であれば有効ですが、田舎だったり、持ち去られてしまったり、人目のつかない場所に放置された場合は、発見が困難になります。
盗難対策の基本については、以下の記事にまとめていますので参考にしてみてください。

5. AirTagの位置情報に関する誤解
AirTagの有効性を検証するために、自身のiPhoneを所持した状態でAirTagの位置情報を確認しても意味がありません。
なぜなら、AirTagは自分のiPhoneとBluetoothで接続されており、自身のiPhoneの位置情報を元に位置を割り出しているからです。
では、Bluetoothをオフにしてしまえば良いかというと、それでも足りません。
iPhoneの位置情報サービスが有効である限り、Bluetoothの電波を定期的に受信して位置情報を割り出す仕組みになっています。
AirTag本来の追跡性能を確認するためには、自身のiPhoneを自宅に置いてくるか、プライバシー設定から位置情報を無効にする必要があります。
参考: iOS/iPadOS のプライバシーと位置情報サービスについて
6. AirTagで注意すべき点
AirTagにはストーカー行為を防止する機能が搭載されています。
所有者のiPhoneから離れた後で、動きを検知すると頻繁ではありませんが、存在を知らせるために音が鳴ります。
更に、一緒に移動するiPhoneに対しては、分かりやすい通知メッセージを表示します。
iPhoneを持っている犯人は、AirTagの存在に気付いてしまう可能性は高いです。
これは、AirTagの機能を備えた他の製品にも含まれる機能です。

また、AirTagは「紛失した後で探す」ことに特化しているため、盗難を検知した直後にスマートフォンに通知が届くこともありません。
7. AlterLockとの違い
AlterLockはロードバイクなどのスポーツ自転車の盗難対策に特化した製品です。
動きを検知した際には大音量のアラームで犯人を威嚇し、盗難を抑止します。

本当にアラームに盗難抑止効果があるのか、という議論があります。
多くの犯人は若年層かつ単独で活動しており、捕まるリスクの高い行為は避ける傾向があるようです。
実際にアラームが鳴って駆け付けると犯人が逃げていったというケースも数多くご報告いただいています。
まずは、盗難を未然に防ぐことが重要です。
異常を検知した直後には、スマートフォンに専用の通知音が鳴ります。
そのため、カフェやコンビニ、トイレ休憩などで、バイクが直接目の届かない場所にあっても、安心して過ごすことができます。
店を出たら自転車が無くなっている!という心配が無くなるというわけです。
また、AlterLockは追跡のために、GPS/Wi-Fi測位と単独での通信機能を搭載しています。
アラームを無視して持ち去られてしまった場合は、アラームを何度も鳴らすことなく、静かに位置情報を送信します。
結論
AirTagは紛失したモノを探すことは得意ですが、盗難を防止する機能はありません。ロードバイクの追跡という観点では、街中以外では追跡できる可能性は低いと思われます。ケースバイケースですので、街乗りがメインとなる場合、発見できる可能性は高まるでしょう。
一方で、サイクリングを楽しむために遠出をしたり、バイクから降りることが少なくトレーニングをしている方でも、郊外のカフェやコンビニで休憩することはあるでしょう。そんなサイクリストの方には、保管場所や鍵の掛け方などの基本をおさえた上で、AlterLockのアラームと追跡能力は、心強い味方になってくれるはずです。